協調は保たれるのでしょうか…
コミットメントについての合意は得られない見通し
昨日、ブラジルのマンデガ財務相は、今週末韓国の慶州で行われる20カ国地域G20財務相・中央銀行総裁会議で為替問題を最優先の議題とするよう、ガイトナー米財務長官に要請したことを明らかにしました。
発言の内容ですが、「各国は為替政策で協調する必要がある。」「G20が為替問題に関して協調行動で合意する可能性がある。」「そうなれば、深刻な商業問題につながり得る一方的な行動ではないことを世界に示すことができる。」「為替市場を最も不安定にしているのはドルだ。ドル安だ。」「ドル安を進行させておいて、中国に元高を求めるのは難しいだろう。」また、同相は、ガイトナー長官が為替問題をめぐる国際交渉をスムーズに進めるため、財務長官の見解を公表、「(ガイトナー長官は)ドル安は米国の政策ではなく、逆にドルを強くすることが米国の政策だと保証した。」「(長官は)FRBの政策(量的緩和)の影響が過大評価されているとの考えも示した。」現在、言われているところのG20声明内容の草案では、「過度な為替変動は悪影響を及ぼす恐れ。」「各国は市場原理によって決まる為替相場を支持。」また当局者筋では各国財務相は「通貨の切り下げ競争」を控える公約を検討しているとの報道がなされています。
前述のブラジル財務相の発言内容は、まさに現在のG20の各国が抱える論点を表しているものと思われます。
一昨年のリーマンショック後、各国が協調して景気浮揚につとめ、何とか世界景気は持ち直してきました。
その後の停滞による景気二番底の懸念と回避に向けての対応、例えば米国の量的緩和第2弾:QE2に代表される様な努力を続けております。
今回のG20で言われている「通貨安競争:Currency War」が注目されるのは、1937年に世界経済が再悪化した時に似た側面があるからだと言われています。
1929年10月24日に起こった「暗黒の木曜日:ブラックサーズデイ」から始まった大恐慌期の1931年以降、主要国は相次いで金本位制を離脱し金融政策と財政政策を発動、景気回復に努めましたが、その一方でイギリスポンド切り下げを契機として欧州諸国の多くが追随して通貨を切り下げる事態も発生しました。
自国通貨を切り下げることで輸出を振興し、景気回復を図る狙いではありましたが、結局は世界貿易が縮小する中での通貨切り下げ競争をもたらし、その結果は保護主義と世界経済の一段の悪化まねくことになってしまいました。
今回のG20の争点は、「IMF」の設立の趣旨と同様といえるでしょう。
それは1930年代の世界恐慌の原因となった通貨切り下げ競争による悪循環を繰り返さないよう、経済協力の枠組みの構築と国際通貨制度の安定性の確保であり、世界の国々(そして国民)が相互に取引を行なう上で不可欠な為替レート制度及び多国間決済制度を安定的に維持することで、生活水準の向上、貧困削減、持続的経済成長の促進のための協調体制を維持することです。
今回のG20は世界経済規模の80%を占める20の国と地域が中心的役割を果さなければならない会合でもあると言えます。
中国、インフレ懸念で予想外の利上げ
19日、中国人民銀行(中央銀行)が2007年12月以来(2年10カ月ぶり)、予想外の利上げに踏み切った。
金融機関の貸し出しと預金の基準金利(期間1年)を20日から0.25%引き上げると発表した。
その結果、1年物貸出金利が5.31%から5.56%に、1年物預金金利が2.25%から2.50%に変更された。
世界経済の不透明感が強まるなか、利上げに慎重な姿勢を続けてきた中国だが、インフレ懸念の台頭や22日から韓国で開催される20ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)を睨んだ対応と見ている。
インフレ懸念の台頭では、中国の8月消費者物価指数(CPI)が前年比3.5%上昇し、政府が年間の抑制目標に掲げる上昇率3%を2ヵ月連続で上回ったことが、人民銀のインフレへの警戒レベルを強く意識させたと思われる。
また、G20が今週末に開催されることから、人民元安を批判する欧米を中心とした主要国などに対応する狙いもあると思われる。
今回の人民銀の利上げは内外の金利差を拡大させ、人民元相場の上昇を促す効果がある。
11月2〜3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加金融緩和期待が先行していることから人民元相場は対ドルで買い圧力が増すのではとの予想ができる。
また中国の金融引締めは同国の経済成長の減速を招くとして、同国と交易関係が深いオーストラリアに及ぼす影響も大きい。
さらに中国の株式市場はもとより、主要国の株式市場への影響も免れないと見ている。
中国株を中心に、どの程度下落するのかが今後の見どころとなろう。
今後の見通し
今週はドル円相場が一時80円台後半に突っ込む場面が見られたものの、殆ど81円台で小康状態となっている。
11月3日の米FOMCでの追加量的緩和期待がドル売り圧力を継続させる一方で、菅首相発言で本邦当局による介入警戒感の強まりや、ガイトナー米財務長官の発言「ドルが対ユーロ、円でこれ以上下落する必要はない」「ドル下落は容認しない」が伝わり極端なドル売り(円高)も控えられている。
ただ今回の米国側の一連の発言は、中国の予想外の利上げ同様に週末韓国で開催される20ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)向け対策とも受け取れる。
その背景には今月8日閉幕したG7において通貨安競争の回避を最大のテーマとしていた。
先進国では中国を筆頭に為替介入で自国通貨の上昇を抑えている新興国への批判を強めたが、新興国側でも強く反発し伴に協調させるのは容易ではない。
今回のG20でも為替が中心議題の一つになることは間違いないと思われることから、量的緩和見通しや各通貨に対するドル安地合いの現実がある以上、G20を前に何かの対応をせざるを得なかった
と考えても不思議ではない。
今後はG20でも為替相場の調整について何らかの合意ができるのかが注目される。
今回の結果を受けて、ドル安容認もしくはドル安防止どちらかの方向性が見えてくるはずである。
ただし現状では、中長期的なドル安の流れが変わる可能性は低いとみている。